マーケティングにおいて、人の心、感情に訴えかけて行動喚起を行う・・・行動心理学や色彩心理学などを用いて、人間のこの無意識の部分にアプローチしていくということは重要なポイントです。
しかし情報過多の現代、顧客はダイレクトに「広告」と感じ取るものを確実に拒絶し始めており、今、闇雲に情報を発信しても、人々の心を捉えて、感情に訴えかけることは難しくなってきています。
人間の行動の約95%以上は無意識のうちに行われており、視覚情報は他の感覚より最優先されます。
そこで、今回は人間の視覚情報処理がマーケティングにいかに作用しているかという観点から、ビジュアルマーケティングについてご案内します。
英語では「A Picture is worth a thousand words」一枚の写真は1000文字に相当するとも言われ、ビジュアルという名の通り、商品やサービスについて、視覚的、ビジュアル的に訴求し、人間の情報処理システムをマーケティングに取り入れた方法のことです。
人間は視覚から受け取った情報を脳に送り、その情報を処理、感情や心が刺激され、行動を起こしています。
また、文章より、画像や動画の方がより早く情報処理をすることができるということは脳科学で証明されています。
文字離れがすすむ現代、この言葉が表すように、視覚的なアプローチに重点を置くことで、お客様の興味・関心・心を惹きつける可能性が飛躍的に拡大するのではないでしょうか?
脳の情報処理の基本要素はニューロン(神経細胞)です。
人間の大脳皮質には約140億個のニューロンがあり、それが網の目のようにネットワークを作って情報を処理したり、記憶したりしています。
物も情報も多い日本では、街中を歩いていても、次々と視覚に飛び込んでくる情報を瞬時に認識し、高速な視覚処理を無意識に続けています。
スマホやタブレットを見ていても、人はものすごい勢いで画面をスクロールし、時々止まって少し読んで(見て)を繰り返し、あの勢いと速さで情報を処理しているのです。
また人間の情報処理能力には、日常的に見ているシーンに多くの要素、物体や背景などが含まれていて、パッと見て、ここはリビング、キッチンとわかったり、外国っぽい、女性っぽいなどと、一瞬の状況の大まかな認識をするという能力もあります。
その時間はわずか0.05秒。
しかし、残念ながら見た後に記憶に残るかどうかというと、それは別の問題です。
人間は何かの情報を見た時、3日間、覚えている確率は10%。
いろいろな情報が高速に消費されていく世の中では、顧客に漠然とリーチしても、なかなか伝わりにくくなっているのかもしれません。
しかし、ザイオンス効果と呼ばれる同じ人やモノに何度も接触するうちに、親近感が増したり、好意的になっていくという心理効果を活用して、ブランドやスローガン・商品を繰り返し見せることで、ブランドを顧客の潜在意識の中に刷り込んでいくこともできます。
このように何度か同じ情報を与えると、覚えている確率が65%にまであがり、これがビジュアルマーケティングの効果といえます。
1. 色彩心理学
色は人間の脳に影響を及ぼし、意思決定などの行動や感情に作用し、色の持つ意味を意識的に活用する手法は多く使われており、言葉ではなく「色」をうまく使い分けて、お客様の次のアクションに繋げています。
例えばアマゾン
似たようなものが並ぶ中で、1つだけ周囲と異なるものがある場合、人はそれを他のものより認識しやすくなり、後で思い出しやすくなるというもの。
取引している商品のジャンルが多岐にわたるAmazonのECサイトでは商品を引き立たせるために全体を白と黒を基調として控えめに設定されています。
しかし最終目的である購入ボタンは人間が反応しやすいオレンジ色で設定されており、最大限に孤立効果と呼ばれる認識心理を活用しています。
2.黄金比
黄金比は数学的比率で、「1:1.618」。
この数値はバランスの取れた比率を表す計算から導き出されており、人間が無意識に美しいと感じる比率になります。
この黄金比は自然界にも多く存在し、ピラミッドの高さと底辺、葛飾北斎の絵画、オウムガイや宇宙からみた台風の渦、シダ植物などがほぼ同率で存在し、視覚的にバランスのとれた魅力的なスパイラルを作り出しています。
Apple・Twitter・Googleのロゴがそうであるように、例えば会社の象徴とも言えるロゴをこの黄金比にするといった活用ができます。
3.三分割法
縦・横3分割した線や線の交差するポイントに重要なポイントコピーを配置する方法で、視覚的に美しいバランスを保つことができます。
写真撮影でもこの3分割法を意識して撮影をすることで、美しい写真を撮ることができます。
4. タイポグラフィ
タイポグラフィとは、文字の配列、文字自体にデザインをして読みやすく見せ、視覚的な訴求効果を活用する方法です。例えば、高級ブランドなどの素敵な写真がメインの広告やポスターであっても、どんな目を引くキャッチコピーを使っていても、文字が読みにくかったり美しくなければ全て台無しになってしまいます。
5. フォーカスポイント
お客様の焦点をどこにもっていくか・・・色・フォントの選択と同様に大切なポイントです。反射・光線・対照的な色・計上を用いることで、お客様の視点を集めるポイントを作ります。
6.ビジュアルパス
お客様の視線を店地方向へ自然と向けさせる方法。
人間の視覚的パターンはZとN、またはFこの流れを意識して、画像を配置することで無意識に人の視線を誘導し、目を離さなくさせます。
7.人間の目を載せる
目をそらさずにジッと見つめている画像を使用することで、人間はそれだけで自然と引き込まれてしまいます。この手法は催眠術でも取り入れられていることがわかるように、非常に効果的な広告手法として、多くの広告が使っているアプローチ方法です。
8. 連想
連想心理学を活用することで、一見、無関係に見える画像、キャッチコピーであっても、人間の脳に強力に印象付けることができるのです。
プライミング効果と言われるこの人間の行動は社会心理学者ジョン・バージの実験で証明されています。
実験参加者に5つの単語カードから4つを選び、並べ替えて短文を完成させるよう指示しました。ただし片方のグループだけは、高齢者を連想させる単語を集めたもの。
もう片方のグループには、決まった連想を促すような単語は与えられませんでした。
その結果、高齢者を連想させる単語を与えられたグループは、そうではないグループより廊下をゆっくり歩くことが確認されたのです。
つまり「高齢者」を連想した結果、無意識のうちに高齢者の行動に似通ったものになったということです。
いかがでしたでしょうか?
スマートフォンやSNSなどの普及にともなって、情報の量は近年爆発的に増加していますが、人間が使える時間は限られており、情報量に比例して売上や反応が増えるということはありません。
つまり残念ながら、顧客は取捨選択して自分が見たいものしか見ていないというのが現状です。
気がついて認識してもらうためには、普段から自社の顧客の興味・関心を意識して情報を集め、パーソナライズされた情報を提供していくことを心がけること
そして最も大切なのは、やはり自社のブランドを育てていくこと。
ロゴやアイコニックな会社の象徴となり得るものによって、そのブランドが伝えたいメッセージを瞬時に一目で認識もらえるということが、ビジュアルマーケティングの理想的なカタチなのかもしれません。