「顧客視点が大切だ」という言葉、耳にされたことがあるかと思います。
顧客視点とは、顧客の目線で客観的な立場に立って自社の商品・サービスを見つめ、評価を行うことです。
顧客の立場から、みなさんの製品・サービスはどのように映っているのか。
顧客から見て特長や機能はどんな風に感じられているのか。
価格・費用は高く感じているのか安いと思ってくれているのか。
競合他社と比較して優位な点や優先順位はどうなのか。
一見、顧客視点のように感じますが、これは完全に企業側からの目線です。
なぜなら機能や価格、費用対効果、競合状況は営業視点。
顧客はどんなことに何で困っているのか。
どんな問題をかかえ、解決のヒントを求めているのか、
答えをもとめているのか。
どのようなことに共感し、どこに価値をもとめているのか。
など客観的に考えたものが顧客視点です。
今日は顧客視点とは一体何なのか、なぜ重要なのかをお伝えします。
では、もう少し詳しく「顧客視点」を考えてみましょう。
顧客視点は客観的に顧客の立場で商品・サービスを評価した時に見つかる顧客の本当のニーズや、インサイトを見抜き、それらを可視化することです。
これにより、適切なマーケティングが可能となります。
この「顧客視点」で混同しやすいのが「お客様の声」。
このお客様の声を考えてみると、より顧客視点が理解できます。
顧客視点は顧客の立場になった時、どう考えるのかですが、お客様の声は顧客の考えていること。
お客様の声は顧客が製品・サービスを利用した際に感じる感想や不満などを言語化した評価のことです。
しかし、その場の直感的な意見や思いが多く、顧客がなんとなく感じている違和感や不快感、顕在化していない不満などは、言葉にできないので含まれていません。
そのため、お客様の声で指摘されたことを改善しても、本当のニーズが反映されていないことになります。
あまりにも有名な例にマクドナルドの例がありますね。
2006年に発売した「サラダマック」を覚えていらっしゃる方も多いかと思います。
この「サラダマック」は「ヘルシーで健康的なメニューが食べたい」というお客様の声をひろい、誕生したメニューと言われています。
たっぷり野菜やフルーツのメニューでジャンクな印象のマクドナルドの新しい試みとして話題となりました。
しかし、実際に発売すると全く売れない・・・その後販売は中止されました。
お客様の声であったのに、なぜ売れなかったのか。
それは顧客視点でみる本当のニーズにはマッチしていなかったことが原因です。
そもそもヘルシーな食べ物を求めている顧客はマクドナルドには行かないということ。
マクドナルドへの顧客視点での真のニーズは「ジャンクとは分かっていても食べ応えのあるハンバーガーを欲望のままにかぶりつきたい」という罪悪感を味わうという提供価値なのです。
もう1つの例にセブンの高級食パン(金の食パン)があります。
通常、コンビニでは扱う食パンには100円前後の比較的手に取りやすい商品が並んでいます。
しかしこの高級路線の250円の食パンが大ヒットしました。
コンビニでなぜ高級食パンなのか・・・
顧客視点で考えると、少しいいパンが食べたいけれど、わざわざ遠くの店に買いに行くというのは面倒。
もう少し手軽に買えて食べられたらいいのに、という潜在ニーズが潜んでいたのです。
コンビニに高級食材という概念がないため、事前にその高級食パンを買いますか?
というアンケートを取ったとしても、買いたいという声はなかったにちがいありません。
この顧客視点に立ったニーズに応えたから、この高級食パンはヒットしました。
このように、お客様の声と顧客視点には大きな違いがあります。
お客様の声はあくまでも顧客が口にする要望や何となくのアイディアであることが多く、なぜ来店するのか、何を求めているのかと、必ずしも同一ではないということを理解しておきましょう。
現在、どの市場も、同じような品質、デザインの商品・サービスに溢れており、あきらかに需要と供給のバランスが崩れています。
1つ新しい商品・サービスが発売されれば、すぐに他者から似たような商品・サービスが発売され、すぐに優位性や差別化はなくなり、競争がうまれる。
この繰り返しで、1社が独占状態の市場はほとんど見つかりません。
また今、お客様は自由自在にデジタルを活用して情報を得ることができるようになったため、お客様から自社の商品・サービスを選んでもらうには、他社よりも優れた独自性を持たせること、またはお客様の求める価値をしっかり提供していくということを常に意識する必要があります。
しかし、魅力的な独自性や価値など、簡単に見つけられるものではありません。
魅力的な独自性や価値によって顧客の満足度やロイヤルティを向上させるためには、顧客の潜在ニーズを見つけ出すこと。
そのためにはこの顧客視点での考え方になるのです。
顧客は、なんとなく感じている違和感や不快感、使いづらさなどに対する潜在的なニーズがあっても顧客はそれをあまり意識できていないことが多い。
この顧客の奥深くに秘められた潜在ニーズを探り出し、可視化してマーケティング活用していしていく
そのために求められるのが、顧客視点に立った自社商品・サービスの評価です。
では顧客視点はどのようにすれば持つことができるのでしょうか。
顧客視点 = 想像力と見た時、異なる2つのやり方があります。
1. 自分が自社の顧客になったと想定して、客観的視点で自社を見る方法。
これはターゲット(ペルソナ)が自分と重ねられる場合に有効です。
例えば、ターゲットが40代働き盛りの男性であるのに、20代女性の自分には、自分が顧客になったと想定するのには無理がありますね。
そこで。
2.自分と顧客はあくまでも違う人間と認識した上で、顧客を想像する方法。
まず、顧客のことをよく理解することから始め、徹底的に観察し、顧客の思考プロセスを自分の頭で再現していきます。
この時重要なのは、自分がそれを見てどう思うか、好きか嫌いかは関係ありません。
あくまで顧客を理解した事実だけを基に顧客がどう感じるかを想定していきます。
自分がどんなニーズや困っていることを抱えていて、その商品やサービスを利用するとどんな良いことが得られるかを考えます。自分と顧客を同一視するやり方です
自分と顧客は違う、つまり、自分と顧客を同一視するのではなく、分けることでお互いを客観視するのです。自分は本質的に顧客にはなれないという、良い意味での諦めがあります。
(自分ではない) 顧客はどう思うのだろうか
前者は、自分だったらどう思うか、感じるかを深掘りします。対話は自分と、顧客である自分自身です。
後者は、(自分がではなく) 顧客はどう思うのだろうと考え続けます。対話の相手は、自分の中につくられた自分とは違うと認識している顧客です。
顧客視点は、顧客の潜在的なニーズに基づく評価だということを意識しましょう。
いかがでしたでしょうか。
顧客視点は、お客様の声のより深くに存在するニーズに応えるもの。
それを知るためには消費者の立場で考えて正確な理由を把握していく必要があります。
自社の商品・サービスは果たして顧客視点に立って考えられているか。
今ある商品・サービスに顧客視点での付加価値を付けているか。
商品・サービスの提供の仕方に顧客視点を考えるだけで反応が大きく変わってくるにちがいありません。
しかし顧客のニーズは常に変化していくので、定期的に顧客視点に立って分析をすることでそのニーズの変化をいち早く見極めて対応していきましょう。