なぜ高級ブランドは高額にも関わらず売れるのか?
そこにはブランディングによって生み出されたブランドの価値が明確にあるからです。
ブランドの定義については、色々ありますが、フィリップコトラーはこう言っています。
ブランドとは、
個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらの組み合わせである。
近年、どの業界においても市場は競合他社ひしめく飽和状態にあり、競争が激化している状況です。
すでに市場でのポジションを確立した大企業を相手に中小企業はブランディングをしてもムダなのでしょうか!?
いいえ、中小企業だからこそブランディングはやるべきです。
ブランディングは企業・商品・サービスの価値を築き、認知度を上げることだけではありません。
■ 価格競争からの回避 ■ 高単価商品が売れる
■ リピーターの増加 ■ 優秀な人材確保
■ 広告コスト削減 ■ 競合他社との差別化
■ 優良な取引先の確保 ■ 新市場への開拓
■ 社員のモチベーションの向上
利益向上はもちろんのこと、ブランディング活動を行っていくことで、このようなたくさんのメリットが次々と生み出されていきます。
特に、これからの市場において新たな事業の確立・拡大、そして安定的なシェアの確保を実現するためには、ブランディングが重要なKeyとなります。
じつは、日本のブランディング導入状況は発展途上。
日本の大企業でのブランディング未導入企業は約14%に対し、中小企業を含む産業全体では70%以上が未導入の状態です。
この数値を見れば中小企業が今すぐにブランディングを導入することで、国内においては競合他社との差別化を強く発揮できると言えます。
今回は成功している大企業のブランディングの事例を見ながら、ブランディングの考え方やノウハウをご紹介していきます。
目次
誰もが知るNIKEのブランディングコピーは「Just Do It」
これだけです。
ある日本人コピーライターが的確な訳を考えていたところ、NIKE本社の社長に「Just Do Itを翻訳するな」と叱責を受けたと言います。
なぜ翻訳してはいけないのかという日本人コピーライターに対して社長はこう続けます。
「いかなるアスリートにとっても最初の一歩を踏み出すことは決してやさしいものではない。行動に移す。その小さな勇気を持つ人々を、そうなりたいと思う人々を応援し、
サポートしていくのがNIKEの仕事だ。NIKEのの哲学を表現したコピーだから翻訳はできない。」と言ったそうです。
これだけの大企業であっても、商品開発、あらゆるマーケティングにおいてもNIKEのアプローチは一貫しています。
その背景には社長のこの強い想いがあり、その想いが本物だからこそ、人々から共感価値を得ているにちがいないのです。
こういった理念の一貫性は学ぶべき所があると思います。
カゴメというとトマトジュースや野菜ジュース、トマトケチャップのイメージですね。
カゴメの創業者はトマト栽培を始めたことをきっかけに、国産トマトソースの製造事業へと発展させ、カゴメと言えばトマトといったブランドイメージを確立しました。
しかしその後コーヒーやその他の果汁ジュースなどにも拡大するも失敗し、原点回帰をせざるを得ない状況に立たされます。
そして行った徹底的な経営改革「カゴメをどのような会社にするのか」「カゴメの強みはなにか」について議論した結果が「トマトと野菜のカンパニー」。
そこにブランドステートメントとして「自然を美味しく楽しくカゴメ」が生まれます。
「自然」とは、自然の恵みがもつ抗酸化力や免疫力を活用し、食と健康を深く追求すること。
「おいしく」とは、自然に反する添加物や技術に頼らず、体にやさしいおいしさを実現すること。
「楽しく」とは、地球環境と体内環境に十分配慮し、食の楽しさの新しい需要を創造すること。
その後、カゴメは社内研修を行って社内に統一したブランド感を敷き、取引先の関係者を工場見学に招くなどして再構築されたブランドを顧客、ステークホルダーへと伝える努力を重ねていったのです。
こうしてできたブランドイメージは企業にとって強力な無形の資産となります
企業が永続的に発展していくためにはブランドの確立が欠かせません。
カゴメの事例からその重要性を学び取ることができます。
タニタは体脂肪計・体温計・血圧計・調理機器・カロリー計などの健康機器を製造・販売しているメーカーです。
タニタは今でこそ誰もが知っているブランドですが、その昔、過去の体脂肪計の成功体験によって組織が硬直化していたのだそうです。そこで伝えるに値するいかに有益な情報を継続的に発信するか・・・
自他社の商品、会社や業界の動きのみならず、会社や経済の動きにまでアンテナを張る・・・
生活者のニーズは変わりやすい。その商品で何ができて、生活がどう変わるのか・・・
そこを軸にして情報や商品の価値を共有して共感してもらうということに注目。
そして掲げたのが「世界の人々の健康づくりに貢献する」でした。
この社会的意義のあるコンセプトを全面に押し出し、まずは社員の健康を守るために高栄養・低カロリーの食事を提供する「社員食堂」を始めたことが話題となり、今では飲食業界にも事業は拡大。
社員食堂のように社食向けのレシピ本の販売や一般人も利用可能な「タニタ食堂」を東京に出店するなど企業ブランディングを向上させることができました。
この事例では、消費者に「タニタのレシピは健康的である」というイメージを抱かせることでブランディングが成功したことがわかります。
ご存知の方も多くいるかと思いますが、トヨタ自動車は「KAIZEN」と言ったサプライヤーの生産性を落とさずに人員を減らす手法や、在庫リスクを下げる手法を広める活動を実施し、多くのステークホルダーから共感を得ました。
この独自の「KAIZEN」は、この言葉のまま諸外国にも広まり、自動車産業のみならず、すべての分野での ビジネスモデルの在り方そのものまでも変えるほどの影響力を発揮しています。
また「KAIZEN」と共にトヨタ式「5S」整理・整頓・清掃・清潔・しつけの取り組みでも有名です。
こうして組織をあげた取り組みによって高品質、高性能という組織価値を体現することでトップとしての現在の地位を作りあげました。
Start Your Impossible
トヨタのキャッチコピーです。
自動車トップ企業の地位を固めながら、常に新しいことへのチャレンジ精神を忘れず、ためなく挑戦する人を応援する企業姿勢。
高品質の商品・サービスを提供し続けることを組織のステートメントとし、世界のトヨタとしてゆるぎないブランド力を発揮しています。
資生堂「一瞬も一生も美しく」
一瞬の美しさから、生涯に渡る美しさをつくるという企業の姿勢が表現されています。
ブランディングとは「らしさ」をつくることでした。
企業としての姿勢が短く、非常に品があり、キャッチーなメッセージで表現されています。
カルピス「からだにピース」
目で見てもらうだけでなく、音で楽しませ、印象に残ることも大切です。
カルピスをしっかり連想させるだけでなく、語呂がよくリズム感もよいので思わず口ずさみたくなるようなキャッチコピーです。
味の素「あしたのもと AJINOMOTO」
会社名に似た枕詞をつけたことで、とても印象に残りやすいメッセージになりました。
一瞬、ダジャレとも取られかねないスローガンですが、同じスタイルを続けたことで、今ではよそには真似のできないお客様にも、社員にも浸透したスローガンになっています。
「夢と魔法の王国」東京ディズニーリゾート。
アメリカのディズニー本社からの許可を得て株式会社オリエンタルランドが1983年より営業するテーマパークです。
東京ディズニーリゾートを訪れる多くのゲストがなぜ一歩足を踏み入れると引き込まれてしまうのか・・・そこには徹底した「物語」の力、ブランディングへの感情価値が存在するからです。
働く従業員をキャスト、そして訪れるお客様はゲストと呼ばれ、パーク内をオンステージ、裏側をバックステージと呼びます。
オンステージでキャストとして働きはじめる初日をデビューと呼び、徹底的に夢と魔法の王国の舞台に立つキャストとして教育を受けます。
また、東京ディズニーリゾートには厳しい行動基準が定められており、その行動基準を元に細かくマニュアルが定められています。
しかし、一般的なマニュアルと異なる点は、キャストが遭遇した状況に合わせて柔軟に対応できるよう、少し余白が残されているということ。
その結果内側からもブランドを強化していく「組織文化」ができあがり、常にキャストはモチベーションが高い状態が保たれているため、個性的なサービスが生み出されていくのです。
東京ディズニーリゾートはゲスト(顧客)を巻き込んだ物語への感情価値を武器に築き上げていったサービスブランディングの代表と言えるでしょう。
いかがでしたでしょうか。
中小企業が大企業から学ぶブランディング手法として、
最後の事例、ディズニーはテーマパークでの顧客体験を徹底的に重視し、訪れるすべての人に魔法のような体験を提供しています。
中小企業も顧客接点での体験を重視し、顧客が特別だと感じるサービスを提供することで、ブランドロイヤルティを高めることはできるはずです。
大企業のブランディングから学べることは多岐にわたりますが、中小企業にとって最も重要なのは、自社の強みやリソースに応じてこれらの戦略を適用し、持続可能な形でブランドを構築することです。
ぜひ参考にしてみてください。