前回の記事ではCX「カスタマーエクスペリエンス」に注目し、CXを考えてマーケティングを行っていくメリットについてご紹介しました。
CXとは、例えば、購入前の販促活動、そして購入後のアフターケア・サポートなどの購買体験、商品・サービスを購入した時に感じる物質的・金銭的・心理的な価値、そしてその企業に対する印象などです。
商品・サービスは物質的で目に見える価値であるのに対し、CXは商品・サービスを認知し購入、そしてアフターフォローなどの購買体験であることから、非物質的で目に見えない感覚的または知覚的価値になります。
丁寧なサービス、楽しさや快適さを感じるコミュニケーションなど、接客に関する部分、または商品・サービスを利用して得た満足感は感覚的価値に相当します。
また、店舗の雰囲気、香り、BGMなど人間の五感に訴えかけるもの、欲しい商品・サービスが見つけやすいなどの利便性に関するものは知覚的価値と言えます。
こうした価値に着目することにより、顧客は企業に何の価値をもとめているのかを考察し、その価値を提供していくことで、CXは向上していきます。
デジタルシフトによってビジネス価値が変化しました。
顧客は自分たちの求める情報を自由にいつでも入手しやすくなり、企業と顧客との接点も多様化しています。
商品・サービス、その情報が飽和した市場では、商品・サービスそのものの価値を訴求するだけでは、競合他社との差別化は難しくなってきています。
こうした中で顧客の購買意欲を刺激し、顧客ロイヤリティを高めて継続的顧客になっていただくためには、体験価値による差別化が注目されているのです。
CXを向上させるにはペルソナを設定し、カスタマージャーニーを作成し具体的な戦略を立てていくことになりますが、その戦略を立てる時、顧客への感情的な価値へのアプローチが有効とされています。
今日はCX「カスタマーエクスペリエンス」を向上させる上で理解しておくべき、5つの「価値」についてご案内します。
感覚的価値とはSense。
つまり人間の五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)によって感じる価値のことで、例えば、パッケージやロゴなどのブランド要素に関わるものや広告、音楽などのコミュニケーションによって感じるもの。
また実際に体験はしていなくても感じる「美味しいに違いない」「心地よさそうだな」といった感覚もこれに含まれます。
この価値が高い場合、香りが好き、または店舗の内装に満足することでリピーターになってもらえる可能性があります。
■ コンセプト・外観・内装・家具・店員の服装など視覚による価値
■ 店にかかっている音楽・店員の元気な挨拶など聴覚による価値
■ コーヒーの香り・調理の匂い・アロマの香りなど嗅覚による価値
■ 美味しい・素材そのものの味など味覚による価値
■ 座り心地の良い椅子・手触りの良い生地など触覚による価値
顧客が商品・サービスそのものよりも、購入・使用した時に体感できる精神的な付加価値のこと。
親切な説明・心のこもった対応・購入した後の手厚いサポートなど顧客の感情に訴えかけることによって生まれる価値のことです。
接客が素晴らしいレストランを何度も利用したり、売上を寄付する企業に共感するなど、結果として企業全体に対する評価が高まっていきます。
■ 顧客の立場に立ったレベルの高い接客
■ キレイで清潔感のある空間
■ これまでにない体験
■ 社会貢献を行う企業方針
■ 創業・商品開発のストーリー
この認知的価値とは、顧客の探求心・自尊心・満足感などに働きかけることによって生まれる価値のことです。
少し難しいのですが、顧客が本来持っている価値観や期待を覆し、「もっと知りたい」「どうして?」といった好奇心を刺激して、その好奇心に応えることで、生まれる価値です。
商品・サービスを購入する時に「おもしろい」「斬新」と感じることで自尊心を刺激されて、リピーターになってくれる可能性があります。
■ 初めての体験にワクワクする
■ 今までとは違う感覚がおもしろかった
■ 先進技術は勉強になる
■ それを使える優越感
■ 自分も挑戦してみたい
ライフスタイルに関わる変化や影響をおよぼす経験価値のことで、実際に商品・サービスを利用して体験し、それが自分たちの生活になじんで受け入れられたことから生まれる価値のことです。
スポーツジムでトレーニングをして健康を取り戻して継続的に通うようになった、自宅にいながらビデオ通話を通じて仕事を進められるようになり、仕事と家事の両立が可能になったといった新しいライフスタイルの創出につながっていくことが期待されます。
■ 仕事が効率的に進められるようになった
■ 日常生活が快適になった
■ 健康的な生活になり、持病が改善された
これは顧客が集団の一員であるという自覚や同じ文化の共有によって得られる価値のことです。
人の価値観、信念、態度や行動などに大きな影響を与えている集団が存在し、それを準拠集団と呼びます。
自分がその団体に所属している・いないに関係なく、何かを決めるときの基準になったり、ライフスタイルに影響を及ぼしたりすることで得る価値のこと。
何かのチームを応援するためにグッズを購入したり、特典にステータスを感じて契約を更新するなどの行動もこの1つです。
■ 応援したい
■ チームに貢献したい
■ 一員になりたい
■ 所属していることにステータスを感じる
いかがでしたでしょうか。
購買までのあらゆるフェーズで顧客が感じる体験価値を指すことはご理解いただけたかと思います。
デジタルシフトによって顧客データは以前より簡単に収集・蓄積ができるようになり、CX「カスタマーエクスペリエンス」を向上させるには、まずは得られた情報から顧客のニーズを分析し、行動を把握することです。
そして、顧客は企業の何に価値を見出しているのかを理解すること、その価値を提供していく上の課題点・問題点を特定します。
マーケティングに携わっている時間が長くなればなるほど、どうしても提供したい商品・サービスが先行してしまいがちで、実際のニーズとのズレが生じてしまう場合があります。
効果的に訴えかけるには、常に「顧客目線」を持って、顧客一人ひとりに寄り添う価値を創造していくことが重要になってくるでしょう。