OMOとは「Online Merges with Offline」の略で、ネットと店舗の境界をなくし、顧客体験を向上させるマーケティング手法の1つです。
直訳すると「オンラインをオフラインと融合する」という意味で、顧客がチャネルの違いを意識せずにサービスを受けられるよう、オンライン・オフラインを分けずに、マーケティング戦略を構築していく考え方を表した用語です。
2020年の新型コロナウイルスの大流行はこれまで未到達だった分野にもデジタル化の波が押し寄せ、アフターデジタルとなった今、ビジネスや私生活でもあらゆるものをデータとしてオンライン上でやり取りをする時代となりました。お客様はオンラインとオフラインを自由に行き来し、その境目は徐々になくなって1つの顧客体験を構築しています。
デジタルや情報技術の発展、人々のライフスタイルの変化により、多くの日本人がスマホまたは同等のスペックを持つモバイルデバイスを利用しており、オンラインとオフラインのサービスを分ける考え方は今の顧客ニーズに適していません。
またデジタルネイティブのZ世代がM1・F1(20−34歳男女)の区分に入ってきており、幼少からデジタルと触れ合ってきたこの世代は消費活動においてもオンラインチャネルを活用しています。今後、このデジタルネイティブが消費者の中核を担っていくこととなり、OMOはさらに重要性を増していくでしょう。
さて、本日はこのOMO「Online Merges with Offline」についてご案内します。
OMOは、オンラインやオフラインにこだわらず、お客さまが好きな方法で購入できる環境を指します。例えば、オンラインで情報を得て実店舗で商品を購入したり、実店舗で商品を確認してからオンラインで購入するなど、オンラインとオフラインを統合して、購入までのお客様との接点を複数チャネルで設置、購入へとつなげることを目的としています。
OMOの代表的な施策として、お客様自身のスマホで商品を注文するモバイルオーダー。
来店前にスマートフォンから注文しておけば、店舗で受け取るだけで買い物が完了するものや、レジに並ばずに注文と決済ができるものなど、使い方もさまざまです。
レストラン等でテーブルに備え付けられた端末をお客様自身でオーダーを送信するテーブルオーダー。テーブルオーダーをセルフレジと連携すれば、注文から会計まですべてお客さま自身で行うことも可能です。
その他にQRコードで決済ができるモバイルペイメント。
スマホ向けアプリで付与するポイント・クーポンなどがあります。
このようにOMOはオンラインとオフラインの区別がないため、送客先は実店舗でもオンラインでもどちらでも構いません。OMOはオンラインとオフラインを統合し、複数のチャネルに購入までのタッチポイントを設けるため、お客さまは自分の購入しやすいチャネルで購入することができます。
OMOと似た言葉には、オムニチャネルがありますが、オム二チャネルとは、オンライン・オフラインでのお客様とのすべての接点を活用して、購買へつなげるマーケティング手法です。
デジタルが普及する前のお客様との接点といえば、テレビCMや折込チラシ、紙媒体でのDM、コールセンターなど限られていましたが、今はこれらの従来の接点に加えてインターネット広告、ECサイト、SNS、メルマガなど多様な接点が生まれています。このようなありとあらゆる顧客接点を活かして販売につなげていくことがオムニチャネルの目的になります。
オンラインとオフラインの両方を活用して顧客接点を統合するという意味では、オムニチャネルはOMOに似た概念ですが、オムニチャネルはあくまでも「顧客との接点」を中心にした考え方です。
しかし、OMOはオンラインとオフラインを融合させることで1つの体験価値の向上を狙う考え方であり、いわばオムニチャネルからさらに発展した概念になります。
OMOに対応し、オンラインとオフラインを区別することなく、両者がシームレスに統合された状態になるとお客様の購買体験において多くのメリットがあります。
OMOはすべてのチャネルの顧客データを統合させることができるため、お客様のニーズを高い精度で把握することができ、データを 活用してパーソナライズされた体験を提供することで顧客体験の価値が向上していきます。
昨今、あらゆる市場でコモディティ化が進んでおり、商品そのもので差別化することは難しくなってきたことに加え、価値観の多様化によって、お客様一人ひとりに合わせた体験を提供することが重要になってきました。つまり、ビジネスの成功には、「よりパーソナライズされた体験の提供」が求められています。
そしてお客様の体験価値を高めることで、LTV(顧客生涯価値)の最大化が期待できます。お客様が自社のファンになってくださり、会社にもたらしてくれる継続的な収益を最大化できるのです。
OMOにもデメリットがあります。
OMOの最終的な目標は、顧客体験の向上によって、お客様に事業者さまのファンになってもらうことです。しかし、OMOはすぐに収益向上に結びつくわけではなく、長期的な運用によって効果が得られる施策です。
顧客データの一元化や分析、お客さまの満足度を高める購買体験を提供するための仕組みづくりには時間がかかり、初期費用と長期的な運用コストが生じる上、すぐに売上に反映されるわけではない点を踏まえて導入を検討した方がよさそうです。
OMOで収集した顧客データは、分析しやすいようにデータベースに収集します。膨大な量のデータを扱うためのデータベースを構築する必要があるうえ、自社システムに既存データがある場合は、その統合もしなければなりません。必要に応じてクラウドストレージやデータ連携ツールなども利用して、一元的なデータベースに顧客データを集約して分析していくことになります。そのため、コスト面や技術面でハードルが高いと感じる場合もあるでしょう。
OMOを成功させるには、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
OMOの基盤となるのはデータです。お客さまのデータはもちろん、商品データ、店舗データ、売上データなど、あらゆるデータを有効活用してマーケティング戦略を立てましょう。
オンラインとオフライン行き来しながら購買を検討している現代のお客様にストレスとならないよう、検討段階で切れ目を感じさせないことがポイントです。そうならないように、オンラインとオフラインのデータは統合させ、購買行動のどのフェーズにおいても、パーソナライズされた体験を提供することが必要です。
また、データをフルに活用するには、できるだけ多くのデータを収集することが大切ですが、そのためにチャネルを拡げてお客様との接点を増やすことです。また、接点を増やしていくことで同時にお客さまと自社の関係性を深める効果も期待できるでしょう。
いかがでしたでしょうか。
日本の多くの商品・サービスは、オフライン水準が非常に高く、実店舗での快適な顧客体験が中心で、日本人はデジタル起点の考え方が受け入れ難い国です。しかし、新型コロナウイルスの流行で、これまで以上にキャッシュレス決済やEC需要を高め、結果としてOMOが成立する土壌が育ちつつあります。
OMOでは高度なデジタル技術やデータ活用ばかりが目立ちますが、その根底にあるのは顧客体験を最適化することです。
企業視点からの利益をもとめて推進される実店舗やECサイトなどの複数チャネルの展開ではなく、顧客にとっての利便性や買い物の楽しさを追究することが、結果自社の継続的なメリットとなる、といったように顧客視点でを持つことが大切です。
OMOが進むことは、購買活動の効率化、最適化につながり、そして企業にとっても、より幅広い顧客をターゲットとしてあらたな市場機会の創出の可能性を拡げてくれるに違いありません。